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2019.12.26

【イベントレポート】丸の内アナリティクスバンビーノ#20「データサイエンティストのキャリア、これから」Session Ⅲ

3部構成でお送りした今回の丸の内アナリティクスバンビーノ#20

記念すべき20回目のテーマは「データサイエンティストのキャリア、これから」
sessionⅢは経営者の視点から見るデータサイエンティストについてお話しいただきました。

Session Ⅲ『経営者から見たデータサイエンティスト』

最後のパネルディスカッションは、投票で「いいね」数を多く獲得した質問をもとに、株式会社エウレカ・取締役CTOの金子氏と株式会社グラフ・代表取締役の原田が経営者の視点でお話しさせていただきました。モデレーターはスターツ出版株式会社の田沼氏です。

─データサイエンスをどう経営に生かしていますか?

 

「分析においてはヘルスチェックといって、経営陣が事業の成長度合いを定点観測しているのが一つ。あとは毎週開催しているストラテジーミーティングでマーケットをどう伸ばしていくかを長期的目線で追う場面でデータ活用している(金子氏)」

ウェブエンジニアのバックグラウンドを持つ金子氏がエウレカに入社したのは2012年。その頃、すでに社内にはデータ活用の文化が根付いていたと言います。

「もっとデータの利活用を進めないと事業の成長度合いが見えづらい」という現在のBIチームの声に経営陣も理解を示し、ボトムアップ式で経営にデータが深く入り込むようになったとのことです。

続いて回答した原田は、「各社のデータに関する取り組みは様々で、エンジニアリングだったり、分析業務だったり、いわばグラデーションだと思っている。クライアントをご支援する際は、その特定や問題範囲の切り分け、スコープ設定から入り、業務を定義することを意識する」と自らが代表を勤める株式会社グラフでの事例実例を通して重要性を語りました。

 

─データ活用における目的と手段の逆転現象を起こさないために、どのような工夫が必要ですか?

株式会社エウレカ 取締役
金子 慎太郎 氏

「まずは課題の特定から始めること。HOWじゃなくてWHYをしっかり理解することが大事。経営側としては1回でなく、伝わっていることを確信するまで何回も言い続ける(金子氏)」

「どういう瞬間に伝わったなと感じるのか」という田沼氏の問いに「たとえば業務の優先順位を定める際に、BよりもAを最優先とした理由をその人の口から説明してもらえた時、伝わったなと実感する」とわかりやすい例を挙げていただきました。

「データサイエンスの業務を選ぶ人は、好きだからなのだと思う。だからこそ手段に寄ってしまいがちで、それだとビデオゲームのプレーヤーと同じ。作り手とは差があると認識することが重要。(原田)」

データサイエンスとは社会応用を前提とした言葉であって学術用語ではないと原田は言います。アカデミシャンな意味に捉えて手段に偏ると、ビジネスの課題解決から遠のく一方、経営者として本人に問う場合もあるとのことです。

手段に偏りがないか、常に自問自答して軌道修正を試みたいと話しました。

 

─データサイエンティストの育成やスキルアップ、機会創出の取り組みはしていますか?

「エンジニアの時に感じたのが、ある一定のスキルまで伸びるのは早いものの、その後の停滞が長いということ。どんな職種もそうかもしれないが、早いうちからデータに触れる機会は用意しておきたい。ただ、ファンダメンタルな知識や技術は必須なので、新卒1、2年までの社員はマストで受けてもらう研修体制を来年の4月、5月には整える予定(金子氏)」

現在、CTOとしてデータ・ドリブンな経営戦略だけでなく、エンジニア全体のマネジメントやキャリア育成に携わっている金子氏。中堅社員向けのスキルアップとしては、AWSやGCPを使える環境作りを考えているとのことです。

 

株式会社グラフ 代表取締役
 原田 博植

自社でデータサイエンティストの社員を抱える原田は「プログラム勉強会などの研修体制などの機会創出はしており、
各産業のトップ5の企業の案件を元請けで経験できることに価値を見出し、次のキャリアを伸ばしていってほしい」と期待を含めて話しました。

「試合でしか得られない成長もあるので、打席に立つ機会は用意している」と続け、金子氏も「同じトレーニングばかりしていても、同じ筋肉しかアプローチできない。高価な機械、いわばマネージドサービスを提供して、違う筋肉を鍛えてほしい」と、スポーツに例えてお話しされていました。

 

─他社には教えたくないデータサイエンティストの活用方法は?

「事業戦略や要件定義などコンサルテーションから、手を動かして納品責任を果たす開発業務まで、“超上流から超下流”の業務を接合して提供するのが、グラフの付加価値。うちのデータサイエンティストには、その付加価値を磨いてジェネラルに全工程を遂行することを条件として、ポテンシャルとモチベーションを採用時に確認している(原田)」

「自身のROIも意識し、1時間の稼働がいくらなのか、どのくらいの価値があるのかを算出できないのは、数字に関わるデータサイエンティストとしては致命的」と前提条件を挙げました。

金子氏は、「データサイエンティストはプロジェクトの早い段階から参加し、課題感を吸い上げる立ち位置にある」と言います。

スターツ出版株式会社
プレミアム予約事業部 統括部長
田沼 和義 氏

株式会社エウレカでは多くのデータサイエンティストが所属しているのかと思われがちですが、「データアナリストとは明確に切り分けがされていて、機械学習やプロダクト担当者をデータサイエンティストとしており、今は数名が在籍している」と回答されていました。

Pairsなどの非正規化した複雑なデータ構造にも強く、他のスペシャリストも手出しできない「神格化」したレベルなのだそう。
他社には真似できないレベルのデータサイエンティストの存在がいることが伺い知ることができました。

 

─経営者としてデータサイエンティストに求めるものは何ですか?

「エウレカとしては、どれだけ事業の成長に対してコミットするのかを重視している。それも単純な増加ではなく、非連続的に伸ばしていくというのがポイント。あとはプロダクトの人と密接にコミュニケーションを取れること(金子氏)」

「やはり、幅広いグラデーションのなかで自分のスコープ設定を見定めていること。そのうえで目の前にあることとデータの接続、その結果の最大化に対して、言い訳なしに効果を出すということを意識してほしい(原田)」

投票形式の質問でもっとも「いいね」数が多かった内容です。これまで出た質問に対するディスカッションを凝縮したような回答となりました。

他にも、会場から多数に及んだ質問より2つをご紹介いたします。

 

─データの専門ではない部門に、データ活用を始めさせるにはどうしたら良いか?

「これも損益設計で、メリットがないと人は動かない。言語化して納得してもらうコミュニケーションや、ちょっとやってこれくらい業務改善したとか、いくら利益が出たとか効果の提示など、合意形成のプロセスを踏むことが必要(原田)」

 

─データロボットやオートMLが浸透する未来で生き残るためにデータサイエンティストはどのようなスキルを身につければいいか?

「進化したツールが次々と登場するなかで一からの構築は縮小する気がするが、活用する機会は増える。VS構造ではなく、各ツールを尊重したうえでメリット・デメリットを洗い出し、プロダクトにフィットさせていく。それはデータサイエンティストが発揮できる分野で、残っていくスキルだと思う(金子氏)」

ツールを使って70%の効果は出せると言い、「あとは自前のプロフェッショナリズムで精度を上げていく」という金子氏の意見は原田も同感するところ。道具がどんどん新しくなるなかで、付加価値が出せるのかが分かれ道だと言います。

コモディティ化した時にデータサイエンティストに求められるものは変化し、その言葉自体も、かつてのOCRや今のAIのようにくっきりと際立つ時が来る─“これから”を予感させるコメントで締めくくられました。

今回は会場の都合により、抽選でのご招待になりましたが、次回はまたできる限り多くの方々とのデータにまつわる議論を行えるよう、今後もイベントを企画してまいります。

今回ご参加いただいた方、またアンケートにご協力いただいた方、ありがとうございました。
次回バンビーノもご参加お待ちしております。

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丸の内アナリティクスバンビーノの開催情報はconnpassにて更新します。
この機会にぜひご登録ください。

今後とも丸の内アナリティクスをどうぞよろしくお願いいたします。

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